知ろうとすること。早野龍五 糸井重里
いい本ほど、感じたこと、考えたことが多くて書き出しに困る。それくらいのいい本だった。
よかった理由は、まず、たくさんの情報や用語がありすぎて、「今どうなってるのか?」そして「安全かそうでないかの基準値はどう決めて、具体的に何が正しいのか?」が分からないことに対して、まず何ミリシーベルトが安全なのかとか、じっくり丁寧に書かれている。
放射線についても、燃料棒の下りから見える原子力発電の仕組みも、内部被ばくの話しも、カリウムなども。福島の野菜は安全らしい、ということを政府がジャニーズを使って広告するから逆に理由が見えなくて不安になったけど、ここには理由がある。明日から私も堂々と福島の野菜を食べたいと心から思えるようになった。100ベクレルという基準値は、たしかにとても低いと思えるようになった。
よかったことの二つ目が、「科学的に安全と言われても、人の心はそれだけじゃ足りない」ということ、「でも、科学的なことをちゃんと伝えれば心も安心させられることだってたくさんある」ということだ。中山さんがデザインしたベビースキャンの下りも、素敵だと思ったし、本当に意味があって、これは震災とか被ばくとかを超えて、すぐ大きい話しをしたがるけど、人の生き方自体の前進だ、みたい気持ちにさえなった。
三つ目は、早野さん自身がどんどん、変わっていくこと。マイナスの問題を真っ向から取り組んで、どんどん変化していく仕事や研究の中で大事にしていることに、意味を感じた。
四つ目、宇宙についての下り。「ぼく、まるで見てきたみたいに言ってますけの、たぶんこれ、確かなんです。」も、「星が死んでいく」という言葉に、え?あ、、と驚く気持ち、「今私たちを構成している水素原子の年齢は138億歳。」「水素に関しては、みんな同級生みたいなものですからね。」と、有限であることと、果てしないスケールや好奇心をくすぐる。糸井さんの「とっても文学を感じます。」にも代弁された!といういい言葉が見つかった感謝があって、「そういう意味でいうと、物理の世界というのは、表せるんですよ。物理学は、けっきょく、数式に書くんです。」と詩、ではない世界を見せることにかっこいい!と思う。
そして五つ目。高校生の下。東北で久美さんや菅野さんたちが仕事をしてきたことや、マイプロジェクトの誕生を思う。マイナスをゼロにする仕事から、未来をつくる仕事へ。
六つ目。早野さんのあとがき。何故かわからないけど、涙が出そうなものがあった。
最後。糸井さんのあとがき。野次馬という心は人に、誰にでも必ずあるということ。当たり前のことや、わかりやすいことを好まないそいつ。でも、「人間という生きとのが、進化していく過程で、こころに「野次馬」を飼っているということは、きっと何かの役に立ってきたのだと、この頃は思うようになりました。」と無責任なわくわくやどきどきを感じることの存在を言葉にしていた。
浪江町に5年経った3月のおわりに高校生を連れて、いく。いい旅にしたい。
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